すぐに役立つネット取引と個人情報の法律トラブル解決マニュアル

題 名:すぐに役立つネット取引と個人情報の法律トラブル解決マニュアル
著者名:高橋裕次郎(監修)
発行年:2006年03月10日
すぐに役立つ ネット取引と個人情報の法律トラブル解決マニュアル
パソコンを操作するさいに浮上する技術的な問題点は、多くの場合時間が解決する。習うより慣れろということだ。力技で、すべてのメニューを開いて確認していけば、なんとかなるもので、苦労して覚えたことはなかなか忘れない。

だが、法律問題はそうはいかない。たとえば、前回書いた著作権。
音楽保存サービスとしてのストレージ利用は著作権侵害と東京地裁が判断した。

http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20070526k0000m040090000c.html

自分が購入した音楽データを自分だけが利用できる場所に保存しておくのが違法だというのだ。
この判断は高部真規子裁判長が下したものだが、この人、以前にも松下電器産業が特許権侵害によりジャストシステムを訴えた件で、ジャストに対して「一太郎」の販売中止を命じたことがある。もちろん、ITによるシステムがどのようなものかの無知によるめちゃくちゃな判断だ。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0502/01/news052.html

松下側にも弁護士がいたはずだが、この判断で一番驚いたのは彼らではないかと想像するぐらい、ひどい結論だった。確認をしてはいないので、単なる想像ですが。
もっとも、この判断はのちにジャストシステムの逆転勝訴となった。正義が勝ったといいたいところだが、常識が認められたに過ぎない。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0509/30/news058.html

しかし勝ったとは言うものの、半年以上の間の裁判費用やその他の遺失利益を高部真規子裁判長は代わりに払ってはくれるわけじゃない。
音楽保存ストレージ利用のほうは、現在の法律に照らせば確かに違法になる可能性がある。冒頭に「自分だけが利用できる場所」と書いたが、正確には他人も利用できる。しかしこれを違法というのであれば、それは法律がおかしいのか法律の運用がおかしいのどちらからだ。たとえば、公園のトイレは公共の場所だが、その個室で鍵をかけずにズボンを下ろすことは公然わいせつ罪になるのか。
この判決とは別件だが、こんな話もある。現在著作権に関しての訴えは親告罪で、それを非親告罪にすることが検討されている。つまり、警察の判断で著作権が取り締まれるということだ。さらにおかしくしようとしているとしか考えられない。

そしてまた先日、ヤフーオークションを舞台にした詐欺事件の判決があった。全く納得できない内容だった。

>“ネット詐欺”に無罪判決・神戸地裁、合理的疑い残る
インターネットの競売サイトに電化製品を出品し、落札者約70人から計約600万円を集めたが商品を発送しなかったとして、詐欺罪に問われた無職川内久美子被告(37)=神戸市中央区=>に神戸地裁は23日、無罪判決(求刑懲役5年)を言い渡した。
佐野哲生裁判官は「被告は当時、赤字額を認識しておらず、ほかの仕事の収益で赤字を補てんし、商品を仕入れて発送できると考えていた。商品を発送できないと知りながらあえて出品した、と判断するには合理的疑いが残る」と指摘した。

http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=NN001Y589%2023042007

被害者900人以上被害金額5000万円以上という規模で、個人が多くの個人をだました事件では結構大掛かりなものだと思う。ここまで大掛かりになった原因のひとつは、初めの被害者がでた際に、ヤフー側が対応を怠ったのではないかと私は想像してしまうが、この想像は未確認です。また、警察もインターネットオークションというわけのわからない事件だし被害金額も一つ一つは少ないし取り扱うのをためらっているうちに被害者が増え被害金額が増えたのではないかと想像するのですが、これも未確認です。
さて、判決内容ですが、被告にはお金を受け取っても商品を送らないでおこうというような詐欺の意図はなく、自転車操業で商品の発送ができると本気で考えていたらしいのですが、もちろんこれは本人の言い分。しかしそれをまともに受け止めての判決が、無罪だった。その根拠が、詐欺について「合理的な疑い」が残るというもの。この佐野哲生裁判官の合理がいったいどこにあるのか、さっぱりわからない。要するに、詐欺の成立には騙す意図の有無だけが問題だと言っているのだろうけど、被害者の数と金額を見れば、騙す意図なくして出来るとはとても考えられない。なぜなら、オークションといえども簡単にはモノは売れない。短期間でこれほど売れたのは、利益も出ないほど非常に安かったのだろう。普通に利益が出ていたのならやっていけたのだから、出なかったはずだ。普通に利益が出ないほど安くできるのは、普通じゃなかったからだ。つまり、出荷するつもりはなかったということだ。
もし本気で騙す意図がなくこの規模まで取引が膨らんでしまったというのであれば、普通の計算も出来なかったというような心身喪失者である可能性にのっとって刑法39条により罪に問えない(刑法39条「心神喪失者の行為は、罰しない。」)と言うべきだろう。それなら合理だし納得できるのだが。
ちなみに、被害者に対する保障は一切ない。お金はもどってこない。佐野哲生裁判官が代わりに払ってくれるわけではない。別途民事裁判をしない限りは。民事裁判で勝ったとしても、お金がどこにあるのかわからなければ戻ってこない。多くの場合は隠されてしまっているか、使われてしまっている。請求は出来るが、取立ては出来ない。
こんな事件で無罪判決が出てしまえば、詐欺事件の多くは無罪になってしまうんだろうと思う。ということは、今後詐欺事件は増えていくのだろう。なにしろ、捕まっても「勘違いしていました。騙す意図はありませんでした」といえば無罪なのだから。
そこで普通に生活をしたい我々としては、自分の身は自分で守る必要があるというあたりまえの結論が出てくる。

日本は法治国家だから、法律が守ってくれると考えている人も多いのだろうけど、実際は違う。トラブルが起きる前には法律も警察も特に味方ではない。
トラブルが起きれば、法律は単に武器になるだけで、武器は戦う相手も同じだけ持っている。今回の判決がそれをよくあらわしている。そういう意味で法律は非常に平等で公平だ。そして、与えられた武器をどの程度使えるかはその人の能力によるわけだが、そういう点では非常に差別的に出来ている。

さて、そういうわけで、この本の紹介。
タイトルどおりの内容だ。法律知識と、トラブル対策として訴訟などの法的手段や、消費者相談窓口について書かれている。
トラブルを起こさないために必要なのは危険回避能力で、法律知識とはまたちょっと違う。危険回避能力はITの知識が結構絡んでくる。そこはこの本では、「安易な操作を避ける」等、簡単に説明している。しかし、すでにインターネットでオークションなどの取引を行っている人は「ネット取引とはどんなものなのか」はよく読んでおく必要があるだろう。

また、この本では紹介されてはいないこととしての注意点。インターネット上の売買は、日本国内だけで行われているわけではないということがある。次の記事をご覧ください。

http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20060524_online_million/

日本人がいいカモであるとわかれば、日本語ページの作成などで日本人向けに働きかけるようになるかもしれない。また、日本人が日本人を相手に外国で詐欺を行うようになるかもしれない。こっちが可能性は高そうに思う。

それから、この手の本を読むときには発行年月日には特に気をつけること。
たとえば、不正アクセス禁止法は、次のように公布・施行されている。

公布:1999(平成11)年08月13日 - 施行:2000(平成12)年2月13日
改正:1999(平成11)年12月22日 - 施行:2001(平成13)年1月6日

つまり、平成11年以前に出たこの手の法律の本は、あまり意味がないということだ。
たとえば、インターネット護身術インターネット弁護士協議会(ILC)編著という本がある。
インターネット護身術
インターネット弁護士協議会
http://www.ilc.gr.jp/

この本は1998年が第一版で、2001年に版を改めている。日付に注目していただければわかるとおり、不正アクセス禁止法に基づき改訂されている。
もし古本屋にこの手の本が大変安価に並んでいたとしても、1999年以前発行の本については、購入は見合わせたほうがいいと思います。もちろん、主要目的以外の使用方法があるならそれはそれでいいんですけど。

不正アクセス禁止法についての詳しい内容は次を読んでください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E6%AD%A3%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%82%B9

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「どこまでOK? 迷ったときのネット著作権ハンドブック」中村俊介著

題 名:どこまでOK? 迷ったときのネット著作権ハンドブック
著者名:中村俊介 監修:植村元雄(弁護士)

「どこまでOK?」迷ったときのネット著作権ハンドブック著作権の本である。
ITとは直接かかわりがないかのように見えて、現代ではITと著作権は非常に密接な関係がある。著作権とは情報に対する権利であり、現代では情報=デジタルデータであり、デジタルデータを取り扱う技術がITだからだ。
漠然と知っているつもりの著作権だが、あらためて勉強してみると自分の無知が恥ずかしくなる。
たとえば、名誉・声望保持権(23条5項)というのがあるとこの本ではじめて知った。
例としてこの本に、高尚な音楽を作ったつもりが低俗なショーで使われたというケースが上げられている。
しかし、こんなのを認めてもいいのかという疑問もある。
たとえバッハのイギリス組曲第2番が女装した少年の手でストリップの伴奏に演奏されたとしても、

「ここまで個性が強ければこれほど見事にストリップの伴奏になってしまうのか。単なる裸踊りを生きた芸術に変えてしまう」(引用:一色まこと「ピアノの森」第08巻)

と音楽学校の先生に言わしめてしまうことがありえるのだが。もっとも、その直後に

「やめてくれ!! この曲はこんなコトのために創られたんじゃないんだ」(引用:一色まこと「ピアノの森」第08巻)

という言葉も続いてはいるが。
個人的には、作品は著作者の手を離れた時点でどのような解釈も受け入れるべきだし、どのような取り扱いも許されると思う。それを禁じるためには、著作者は著作物以外に自分の意図を記したレジュメをつける必要があるだろう。落語のオチ解説をつけろというわけだ。
もちろんそんなものは不必要だ。だからこの法律は、そういう観点で見ればパロディ作品に対する牽制なのかもしれませんね。
こんあ勝手な法解釈がありえるのも、法律そのものに解釈の余地があるからなのだと思う。

この本では、大胆にもディズニー社を対象にして著作権を説明していく。著作権とディズニーにも密接な関係があるのだが、契機となった出来事もコラムに書かれていた。
著者の中村俊介氏はウェブサイトも運営していて、アドレスは下記のとおり。

http://www.geocities.jp/shun_disney7/

サイトでは掲示板もあり質疑応答が盛んに行われている。
本の内容については、次のアドレスに詳しく書かれている。

http://www.geocities.jp/shun_disney7/book.html

著作権とネットとの関係で迷った時に本を開いてみれば、例示されている中に自分が抱えている問題があるかもしれませんね。

余談だが、昔のテレビ番組で名作の誉れ高くても再放送できないものがある。技術的な問題で再放送できない場合(当時はまだビデオ技術がなかったとか、ビデオテープを使い回しして上書きしていた等)もあったらしいのだが、それ以上に、著作権の問題でもあったと、立ち読みした本に書いてあった。本のタイトルは失念。放送は一回限りのものという前提で、録画は著作権にある複製の権利に触れるわけだ。そのあたりはとっくに改正されて、今は著作隣接権として放送事業者の権利として、複製権や再放送権が整備されている。
今でも見たいドラマはNHKの「天下御免」。兄とのチャンネル争いに負けて見れなかった回がある。それがとても心残りだ。チャンネル争いそのものが死語になってきているのかもしれないけれども。

借りた図書館:大阪府立図書館

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IT関連のお勧め本、お勧めじゃない本、どっちでもない本

なにか勉強をしようと思い立って図書館や書店に行っても、目の前にずらっと並ぶ本を見て、どれがいいのかと悩むことも多いかと思います。限られたお金と時間を使うのですから、悩んで当然です。 そこで、図書館にある本を見るという選択をすると、限られたお金がセーブできます。しかし、図書館にある蔵書では、注意すべき点がひとつあります。 それは、鮮度です。IT関連の知識や技法、あるいは常識というものは、時々ころっと変わります。まったく正反対に変わってしまうこともあります。そのため、鮮度は非常に重要です。 簡単に鮮度を確かめる方法は、発行年月日を確認することです。IT関連の本だけではなく、法律関係や経済関係の本でも同じことが言えるかと思います。 しかし、日付が古いからといっても、鮮度が落ちているとは限りません。中にはいつまでも鮮度が落ちずに輝き続けている本があります。そういう本は、古本屋さんで探して手元に残すようにしたいと考えています。  とりあえずは手近な図書館をターゲットにして、IT関連の本をここで紹介していくことにします。 どれくらいのペースで紹介していけるかはわからないのですが、何とかやっていくようにします。

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